整ったはずなのに、どこか物足りない
セットアップを着る日が増えた。
白Tに黒のパンツ、ジャケット。無彩色で揃えれば、外出前の不安も少ないし、「ちゃんとしてる人」に見える。
だけどある日ふと、鏡の前の自分を見て思った。
「……悪くはない。でも、どこか“地味”すぎるかも。」
整えたはずなのに、物足りなさを感じる。
その原因は、「色気」の欠如だった。
差し色は、“余白に差すひとしずく”
「差し色」とは、コーディネートの中に意図的に足された“色のスパイス”のこと。
でもそれは、派手な色とは限らない。むしろ、静かなスタイルの中にあるからこそ映える。
靴下でも、バッグのストラップでも、時計のベルトでもいい。
小さな“色の余韻”が、全体を引き立ててくれる。
差し色とはつまり、無彩色を選んできた自分が「ちょっとだけ遊び心を持った」証拠だ。
グクの紫──“色に意味を込める”という選択
差し色の達人といえば、BTSのジョングク(グク)もその一人。
私服では黒や白、グレーといったミニマルな色味が多いけれど、よく見るとキャップやシューズに紫を差していることがある。
紫は、BTSにとって特別な意味を持つ色。
ファンとの絆を表す「ボラへ(=紫するよ)」──“最後まで信じて愛し合おう”という想いが込められている。
彼のスタイルを見ていると、こう思う。
差し色は、目立つためじゃない。
自分の軸や価値観を“静かに語る”ための色なのかもしれない。
差し色を始めるなら、小さな面積から
最初から大きく色を使うのは勇気がいる。
でも、ほんの少しの色なら気負わず取り入れられる。
おすすめは…
- 靴下(見え隠れする“遊び”)
- キャップやニット帽(顔まわりにアクセント)
- 時計のベルトやスマホケース
- ハンカチ、ポケットチーフ
差し色は、“いつもの自分”にちょっとした余白をつくってくれる。
「ちょっと攻めた」自分に、慣れていく
私もある日、カーキのセットアップに、こっそりワインレッドの靴下を履いてみた。
誰も気づかなかったかもしれないけれど、自分の中では小さな冒険だった。
不思議とその日は、気持ちが少しだけ軽やかだった。
「あ、俺ちょっとだけ“色気”出してみたな」って、内心にやけていた。
無難のその先に、“自分色”がある
整えることは、まず余分をそぎ落とすことだった。
でも、その先には「遊び」や「個性」を足す楽しさが待っている。
差し色は、自分を取り戻していくための一滴。
控えめな人こそ、少しだけ“色”を持っていい。
地味で終わらせない。
自分らしく、静かに、色っぽく。
今日もまた、セットアップのどこかに、少しだけ「自分」を差してみる。