ある日、友達からLINEでランチのお誘いが届いた。
女子3人と僕。なぜいつも僕なんかを誘ってくれるのか、不思議だった。
口数は少なめ、いつも聞き役。
でも、居心地はいいのかな――そう思ってもらえてるのかもしれない。
さっそく、どこへ行こうかと調べまくる。
見つけたのは商店街の人気カフェ。おしゃれで雰囲気もよし。すぐに予約した。
安堵とともに、急に押し寄せた感情。
「何着て行こう?」
最近、楽ちんな格好は卒業したかった。
イケオジスタイルに憧れてた。
そうだ、買い物に行こう。
妻がグク推しで「セットアップいいよ」と勧めていたのも後押しになった。
選んだのは定番の紺ジャケットのセットアップ。
そのままABCマートで白革靴(のようなやつ)も購入。
足元まで仕上がった。
でも――最後の難関、白T。
セットアップはひとつしかないのに、白Tだけで無限の可能性がある。
生地の厚さ、ポケットの有無、ワンポイントのデザイン…
印象がまるで違う。
この“たった一枚”で、全体の印象が決まる。
だから、悩んだ。
厚手なら透けにくいけど、重すぎると暑い。
ポケット付きはカジュアルすぎるかもしれない。
ワンポイントはおしゃれだけど、主張しすぎると浮く。
白Tって、シンプルなのに“選びの沼”だった。
ランチまで2週間。
最終的に前日に選んだのはグリーンレーベルの太番手、ワンポイント入りの白T。
家で一式試着する。鏡に映る自分は、どこか背筋が伸びていた。
“仕上がった”という感覚。これだ。
結局、ランチはイメチェン大成功だった。
「雰囲気変わったね!」
「似合ってる!」
女子たちの反応に、ちょっと気分も上がる。
セットアップは“簡単そうで、実は奥深い”。
そして、白Tこそが「仕上げ」なのかもしれない。
白Tの話は、まだ語りきれていない気がする。